宮田俊介
信頼性を考慮した舗装設計法に関する研究
わが国の舗装設計法において,構造設計での設計寿命年数と実際の寿命年数には大きな差があり,早期破壊,オーバースペックといった問題がみられる.これは,現行の舗装設計法では,入力条件である材料条件や交通条件などのばらつき(変動)を考慮していないためである.こうした現状を打開すべく,本研究では,入力条件のばらつきを考慮できる信頼性設計法を構築し,構造設計を合理的に行なえるようにした.
本研究における信頼性とは,設計寿命期間の交通量と環境条件のもとで,設計された舗装がその機能を満足する確率である.例えば,設計寿命が10年で,信頼性が90%の舗装とは,設計した舗装構造が10年間破壊しない確率が90%ということである.
本研究では,信頼性設計法を構築するにあたり,以下のような検討を行なった.

1.入力条件のばらつきが舗装の破壊年数に及ぼす影響の評価
入力条件のばらつきが正規分布するもの(弾性係数,層厚,交通量)についてダイレクトモンテカルロ法を用いた数値シミュレーションを行なった.その結果,下層路盤の弾性係数のばらつきは,舗装の破壊年数に及ぼす影響が小さいことが明らかとなった.
入力条件のばらつきが正規分布しない走行位置分布,温度のばらつきについては,それぞれ違った数値シミュレーションを行ない,舗装の破壊年数に及ぼす影響を検討した.その結果,走行位置分布,温度のばらつきは,舗装の破壊年数に影響を与えることが明らかとなった.
2.Rosenbluethによる方法を用いた舗装の破壊年数の確率変動予測
1の結果から得られた舗装の破壊年数に大きな影響を及ぼす入力条件のもと,計算回数が少ないRosenbluethによる方法(ごく少数個のZ=u(X)の関数値だけからZの確率分布を近似する方法)を用いて舗装の破壊年数の確率変動を予測した.Rosenbluethによる方法により,ダイレクトモンテカルロ法と同程度の舗装の破壊年数予測が可能となった.
3.遺伝的アルゴリズムを用いた舗装構造の最適設計
構造設計を行なう際,コストという重要な要素を考慮し,より低コストとなる舗装構造を見つけ出さなければならない.従来用いられてきた最適化手法では,解を得るまでに多大な時間が必要となることや,最適化する関数が多岐性を有する場合,いったん局所解に陥ると,そこから脱出できないという問題点を有していた.そこで,新しい最適化手法である遺伝的アルゴリズムを用いることにより,舗装構造の最適設計を行なった.
4.2の破壊年数の確率変動予測を3の最適設計に組み込み,信頼性設計法を構築した.本研究の成果に基づいて構築した信頼性設計法は,入力条件のばらつきを考慮した舗装の設計寿命を満足し,かつ最も低コストの舗装構造設計が可能である.