星野大輔(防災設計工学研究室)
気泡混合軽量盛土のせん断挙動に関する研究

 現在気泡混合軽量土(以下軽量土)はその軽量性と施工性の良さから軟弱地盤上や狭隘な箇所での盛土工事などで使用されており、今後ますますの使用範囲が拡がると考えられる。これまで軽量盛土をテーマとして、物性・力学特性および盛土構造物への適用性といった研究がなされている。しかし構造物を設計する上で重要な気泡混合軽量土の引張強度を調べた研究が少ない。本研究では軽量土の大型供試体を作製し、垂直荷重および水平荷重を作用させ2軸応力状態を再現し、供試体に斜め引張応力を生じさせる水平載荷試験を行い、軽量土が有する引張強度を求めせん断耐力を確認すると共に、斜め引張による軽量土への影響を明らかにする事を目的とし、上載圧および供試体強度・横方向せん断歯有無の条件を変化させた5つのケースについて試験を行った。以下にその結果を述べる。

 供試体表面に発生するクラックについては、各ケースにおいて正負交番載荷試験で見られるバツ印状のクラックが発生しており、上・下部および横方向に設置したせん断歯によって、せん断力が供試体に一様に作用したと考えられるが、横方向のせん断歯を作用させない構造とすると、浮上り防止装置の拘束効果が少なかったため、より大きな勾配でクラックが発生しており、供試体浮上りの影響が現れた。

 供試体強度の影響については、初期クラック発生荷重に差が見られ、供試体が降伏するまでの範囲内で変形特性に大きな影響を与えるが、最大荷重がほぼ等しいためにクラック発生後についてはあまり影響していない結果となった。上載圧については、その値が大きいほど、ひび割れ発生荷重・最大荷重共に大きくなり、せん断抵抗力が大きくなる結果となった。

 気泡混合軽量土の2軸応力状態における斜め引張り強さは一軸圧縮強さのおよそ20〜40分の1程度と非常に小さく、2軸応力に伴う斜め引張応力に対して非常に弱い材料である事とが分かった。試験前の想定破壊荷重が400kNであったのに対し、本試験を行った範囲では最大荷重が98kNと大きく下回った。これは、気泡混合軽量土は2軸応力下でせん断に伴って発生する引張応力に対して非常に弱い材料であり、初期に発生したクラックが構造上の弱部となり、発生したクラックに追随する形でクラックが進行するため、供試体の挙動に大きな影響を及ぼす事が分かった。