防災設計工学研究室 野上和馬
湿潤状態下で繰返し荷重を受ける気泡混合軽量盛土に関する研究


 近年我が国における社会資本整備は、社会構造や経済状態がめまぐるしく変化し、その時代の建設技術が駆使され防災、交通手段、公共スペースとして様々な施設が整備されてきた。そして土地の高度利用が進み、軟弱地盤上にも施設が造られるようになったため、地盤の圧密沈下などの問題を数多く生じる結果となった。そこで、盛土荷重の軽減による沈下量低減、擁壁に作用する土圧低減、工期短縮、コスト削減といった利点を有する気泡混合軽量土が注目されてきた。

 現在、気泡混合軽量土を用いた鉄道用盛土では、設計強度で1500kPaの材料が主として使用されている。今後更なる軽量化に伴って軽量盛土の設計強度が小さくなった場合、繰返し荷重による影響が大きくなると考えられ、軽量土の力学特性に関する検討は、設計および施工上の重要な課題の一つとなる。また、鉄道用盛土の盛土材として使用した場合に、鉄道線路で問題となっている噴泥現象と同様の挙動を示す恐れがある。したがって、この挙動を明らかにするために、湿潤状態の気泡混合軽量盛土模型試験体(以下盛土模型と略す)を作製し、列車走行時の実測データを基にした繰返し圧を載荷する繰返し載荷試験を行った。なお本研究では、繰返し載荷試験を予備載荷(載荷板と盛土模型間のあそびを除いたり初期沈下させる)、乾燥状態、湿潤状態の3つの行程に分け、設計強度が小さくなった場合の予備載荷および乾燥状態で繰返し圧による影響について検討し、湿潤状態では噴泥現象についての検討を行った。これより、本研究で得られた知見を下記に示す。


 繰返し載荷試験から得られた知見
(a)予備載荷および乾燥状態
・ 盛土模型の圧縮強さ(qu)と盛土模型に載荷される最大応力(σmax)との比である荷重比  (σmax/qu)が0.2までなら、繰返し圧による盛土模型の沈下量は0.1mm程度とほとんど 沈下しない。
・ 現在鉄道で使用されている軽量盛土の設計強度を1500kPa(空気量40%)から設計強度500 kPa(空気量60%)に強度を変更しても、すなわち、現在使用されている軽量盛土をさら に軽量化しても、列車走行荷重に十分に耐えられる事を確認した。

(b)湿潤状態
・ 多くの場合は、水を供給しても直ちに噴泥現象は始まらなかった。載荷を繰返すうち に載荷板の下に水が十分浸透して噴泥が始まるものと推測される。
・ 噴泥現象が発生すると、湿潤状態の盛土模型の沈下量は急激に進行する。その後安定 状態に入り散水装置から供給される水量が一定ならば、ほぼ一定の沈下勾配で沈下す る。
・ 噴泥現象が発生し、沈下曲線がある一定の勾配を有しながら沈下している時に、散水 装置による水の供給量を増やすと、沈下曲線勾配は急になる。
・ 本研究で試験した範囲では、盛土模型の強度が同じならば、盛土模型に供給される水 量が多いほど沈下勾配は大きくなる。