防災設計研究室 尾澤　知憲
軟弱地盤の弾塑性圧密せん断挙動の有限要素解析

地盤工学では構造物の設計において変形のみでなく，地盤の極限支持力や斜面の安定性
などの極限状態に着目して設計することも多い．しかし，有限要素法による弾塑性変形解
析は荷重と変形間に1対1関係の喪失する極限状態の近傍では解が振動・発散する現象が
生じ，未収束のまま解析が終了して地盤の極限状態を解析することが出来なかった．その
ために，従来変形と安定性を分離して安定性に関しては極限平衡法などの地盤の極限状態
を直接解析する方法を用いてきた．しかし，弾塑性変形解析によって変形から安定まで統
一的に解析できればその工学的意義は大きい．本研究では近年の数値解析法の成果を用い
て地盤の弾塑性変形解析法を開発する．非線形方程式の解法に弧長法，弾塑性構成式の厳
密な満足とひずみの弾性，塑性成分の分離にリターン・マッピングを用いた．開発したプ
ログラムの妥当性を検証するために平面ひずみ供試体の要素試験と帯基礎の支持力問題の
解析を実施した．供試体の解析では理論解を満足するだけではなく，応力が降伏関数に到
達して後にも供試体の非拘束変形（破壊後の解析）が解析によって表現できることを確認
した．供試体の応力は中間主応力が構成式によって定まる．弾性状態ではポアソン比によ
るが，塑性状態では流れ則より決定される．したがって，供試体の応力は弾性から破壊に
到達するまでに応力の回転が生じるが，精度良く解析された．また，支持力解析ではプラ
ントルの解（理論解）との比較を行ったが，非常に良く一致しており，解析の精度が確認
された．地盤工学では地盤を構成する土粒子の骨格だけでなく，水の影響を考慮した弾塑
性圧密変形が必要となる．本研究では上記の方法を拡張して土・水連成弾塑性圧密変形解
析プログラムを開発した．盛土の構築問題のように荷重の載荷から一定放置による圧密解
析までを解析できるように，弧長法の拡張・定式化を行った．解析手法の妥当性を検証す
るために1次元圧密解析を行い，厳密解と一致することを確認した．平面ひずみ供試体の
解析を行ったところ，完全非排水・排水条件では理論解を得た．上面を排水条件とする部
分排水条件についての解析を行うとせんだん抵抗角の小さい条件では良好な解析結果を得
るが，せんだん抵抗角が多い場合に有意義な解を得ることが出来なかった．土水連成解析
については未だ汎用性に関して問題が残された．今後の課題としたい．