氏名:浦 和宏
タイトル:アルキメデス2球法を用いた高温ガラス融液の密度測定法の確立
近年、様々な場面で用いられているニューガラスは、高機能、高性能が求められるために、品質レベルが重要視されている。また昨今の時代背景から、二酸化炭素の排出抑制、ならびにエネルギー消費量の削減を行わなければならない。その結果、溶融時におけるガラス物性の正確な把握が必要とされている。
ガラス密度は、最も基本的な物性の一つであるにもかかわらず、測定値を正確に報告された例は数少ない。そこで本研究では、アルキメデス2球法を用いたガラス融液密度の測定方法、ならびに測定装置の確立をする事により、正確にガラス密度を測定することを目的としている。
ガラス融液の密度測定は、密度が非常にstaticな性質であるために、融液中の泡、炉内の温度分布などの高温測定での難しさに加え、電子天秤の熱ドリフトなど、測定中にも周囲の変化に大きく影響を受けてしまう。そこで、まず周囲から受ける影響を最小限にするために、各所に水冷を施し、特に天秤には恒温槽で一定温度に保持した水冷を施した。
その結果測定状況によって最大10℃変動していた電子天秤雰囲気の温度がおおよそ1℃で安定させることが可能となった。
ガラス融液密度の測定限界は、融液の対流等から高温で現れると考えられていたが、逆に高温側で精度良く、低温側で測定精度が悪くなる。このことは、吊り線である白金線が熱伸縮を起こし、応力が生じ、その応力が高温側、即ち低粘度では緩和できていたが、低温側、即ち高粘度になると天秤へ応力となり作用するためにデータの精度が悪くなるのではないかと考えた。そこで、電気炉下部から一定の流量で空気を引き抜き、応力緩和への効果を確認したが、大きな変化は確認されなかった。
次に測定精度と再現性について確認した。測定精度はおおよそ1%であったが、再現性は、測定精度に比べ著しく悪かった。
このことから二つのことが考えられる。
一つは、電子天秤の時間的ドリフトが測定精度に大きく影響を与えているということ。
もう一つは、測定サンプル自体の組成不均一があるかもしれないということが考えられる。
いづれにしても今後より力を入れて解決しなければならない問題である。