松浦 貴
地方都市の市街化調整区域における開発の実態と課題に関する研究

1968年の都市計画法改正に伴い、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る目的から都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分する線引き制度が制定された。「市街化を抑制すべき区域」と定められた市街化調整区域では、開発許可制度によって開発が制限されるが、実際には多くの開発が行われている。
本研究では、地方都市の市街化調整区域での開発実態を調査し、開発許可制度のあり方について提案を行うことを目的とする。
始めに新潟県の開発許可制度の内容を整理し、制度上で問題といえる点について分析したところ、新潟県の運用基準では、調整区域での開発が起こりうる点を指摘した。
次に、新潟県長岡市の昭和50年から平成11年までの25年間の開発データから、市全域の開発傾向の把握をしたところ、以下のことが明らかになった。
@ 全開発の半数以上が住宅の建築を目的とした開発である。
A 地域によって開発面積や件数、建築物の用途に相違がみられる。
さらに長岡市の川西地域を対象に詳細な開発位置の把握を行ったところ以下のことも明らかになった。
@ 主要道路の付近では沿道サービス施設の開発を抑制できない。
A 住居と工場が隣接し住環境の悪化を招く恐れがある地区がある。
また、同じ開発許可基準で調整区域の開発を制限している新潟市と上越市に対して、長岡市と同様の問題が生じているかヒアリングした結果、同じ基準で運用しているにも関わらず、都市によって全く異なる開発傾向を示していることが明らになった。そして、開発許可制度で許可不要と考えられていた開発が、調整区域において周辺環境の悪化を招いたり、市街化を促進する要因となることがわかった。
これらの点から、同じ運用基準で許可を出していても、市町村が調整区域における開発をどのように考えるかによって調整区域での開発をコントロールすることができる可能性があること、許可不要な開発であっても、開発許可制度の基準に照らし合わせ、適切な運用を行う必要があることを示した。