都市計画区域の指定に関する研究
高橋 勝

 近年のモータリゼーションの進展により、昭和50年代以降地方都市圏でも都市化が進行し、それに伴って、緩規制地域である都市計画区域外の自治体でも開発が行われスプロール現象が発生している。そこで、本研究では、地方都市圏の自治体でも都市化が進行し始めた昭和55年以降に都市計画区域指定を行った165自治体を対象にした。まず、新潟県西川町を対象に都市計画区域指定指定協議、農業振興地域変遷や農地転用動向を調査し、都市計画区域指定によって適切な土地利用が行えるようになったかを検討する。

 また、全国の都市計画区域を指定した自治体に対してアンケート調査を実施して、西川町と同様の事項を把握し、都市計画区域および用途地域指定の評価を行った。

 西川町では、用途地域指定後に用途地域内での農地転用が多いが、主要幹線道路沿いでの農地転用が多くなっている。その結果、用途地域内で残存農地が多い。しかし、農用地区域を広く設定しているため用途地域周辺での農地転用は少ない。

 アンケート結果から、全国の都市計画区域新設自治体では、都市計画区域および用途地域を指定することにより、無秩序な開発を抑制できたり、土地利用の純化が図られたとする一方で、スプロール化が進行していることが明らかとなった。さらに、用途地域を指定した自治体に対し、西川町と比較検討するために、追加アンケートを行い用途地域指定前後での農業振興地域の変遷等を空間化し指定の効果を調査した。実態事例自治体として青森県上北町と福岡県桂川町を挙げ、西川町と実態事例自治体とを比較しながら、上述の問題について指定協議に着目し分析を行った。その結果、土地利用基本計画の都市地域と他地域の調整よって、都市計画区域内に緩規制地域が創出されることが明らかとなった。また、用途地域指定の際には、用途地域外に農振白地が設定される場合もあり、用途地域指定後に比較的開発行為のしやすい農振白地へ開発が移行する傾向がある。
また、農用地区域での農地転用が比較的簡単に許可されてしまうことも、用途地域外の開発が増える要因であることがわかった。一方、用途地域内の残存農地が多い原因として、将来人口等の推計が過大過ぎることが挙げられる。

 これら用途地域外の緩規制地域の開発規制は、農地転用許可基準や都市計画法による線引き都市より緩い開発規制しかないため、簡単に許可されやすく、その結果、農地の断片化を発生させ一団の農地の確保が困難になるとともに、農家の営農意識維持の観点から問題がある。さらに、用途地域外の集落で建物用途の混在が起こり、このことも営農上問題があることを指摘できる。