容積率の指定状況からみた都市構造の評価
鈴木正広
地方都市の多くのでは低密な市街地がスプロール的に広がっており、拡散した都市構造を形成している。これは都心部の機能的地盤沈下、都心の空洞化といった都市の抱える諸問題とも密接に関わっている。このような状況の中で、コンパクトな都市構造の構築が重要視されている。本研究では、市街地像ひいては都市全体の構造を決定する一要因としての容積率に着目して、地方都市を対象に、都市ごとに容積率種別の指定面積を明らかにし、容積率が規定する都市の想定延床面積の側面から、都市構造を比較解析する。そして容積率指定についての課題を明らかにし、容積率の効果的な指定を考えるための糸口とすることを目的とする。
本研究では、区域区分が設定されている、人口10万人以上、三大都市圏に含まれない、という3つの条件を満たす全国の都市を地方都市と定義し、合計 100都市を分析対象とする。使用データは自治体作成の都市計画総括図、県作成の「県の都市計画」及びGISソフトのSISによる面積測定に基づく。まず、都市全体の容積率指定状況について、次に住居系用途地域に指定されている容積率と商業系用途地域に指定されている容積率に分けて分析しており、指定種類・頻度・構成比・面積・容積率の指定の組み合わせについての特徴を示した。
次に、想定延床面積について分析し、想定延床面積に影響するのは市街化区域の指定面積と低容積率の指定割合であり、同規模の想定延床面積であっても、指定面積が大きく低容積率の指定割合が高い場合、指定面積が小さく200%の指定割合が高い場合の2つの容積率構成があることを示した。
また、都市ごとに特徴的な容積率指定の組合せやその指定場所、といった指定パターンを抽出するとともに、住居系用途地域と商業地域の一人当り想定延床面積の量によって都市を8つに類型した。そして、この類型ごとに都市が容積率によって与えられる想定延床面積の空間分布の特徴を示した。
次に、線引き見直しによる市街化区域面積の経年変化が大きい3都市、小さい3都市の計6都市について市街化区域編入の特徴と、地形・交通体系との関わりから容積率構造の経年変化について検討し、当初指定の市街化区域で指定されている容積率のみが編入時にも指定されていることから、当初指定時の市街化区域で少ない種類で指定している都市は、編入時にそのまま継続して当初指定と同一容積率のみを指定する可能性があることを示した。