線引き都市計画区域外縁部における土地利用規制と開発動向に関する研究

都市計画研究室 河野 誠

                             指導教官 中出 文平

昭和43年の新都市計画法の制度化より、市街化する市街化区域と市街化を抑制する市街化調整区域に2分する線引き制度が導入された。しかし、この制度は大都市圏の適用に重点を置いたものであり、10万人以下の地方都市については市街化が急速に進行しないとの判断で暫定的措置がとられた。しかし実際には、線引き都市に限らず、その周辺市町村でも人口増加がおきている。そこで、本研究では線引き都市計画区域境界を対象に土地利用規制の状況を把握し、その上で外縁の開発実態を把握する。そして土地利用上の問題・課題を明らかにし、今後の法規制のあり方を検討する。
本研究は新潟県とその隣接県及び北陸地方の全7県に指定されている線引き都市計画区域、全9都市圏を対象として、線引き都市計画区域境界より内外1kmの土地利用規制状況を把握した。その結果、市街化区域及び用途地域がその範囲に多く存在することが明らかになった。
次に、各都市圏の中心都市への通勤率の変遷や人口・世帯数の動態、農地転用を把握した。県内の生活圏域が線引き都市計画を超えて拡大している状況やそれに伴う周辺市町村の人口・世帯数増加の状況が明らかになった。また、農地転用が集中する地域が、幹線道路周辺や、先に述べた市街化区域・用途地域が存在する地域で多いことが分かった。
次に、これまでに把握した土地利用規制の状況と農地転用の状況を踏まえて、研究対象として4地域を抽出し、線引き都市計画区域境界をはさんで、線引き都市計画区域側と未線引き側について比較することで実態を明らかにする。制度運用については都市計画法と農振法等による農用地区域の指定、及び解除の状況を分析する。また、大字別人口・世帯数や農家人口、開発許可や農地転用といった指標を用いて、開発の実態をミクロな視点で明らかにする。さらに、行政へのヒアリングによって、開発の実情や問題意識等を調査した。
研究対象とした4地域の線引き都市計画区域外縁では、都市計画上の緩い規制状況を補うはずの農振法が、開発を意図して指定されている事、また、農地転用許可や開発許可の集計により、そのような開発を意図した地域で実際に開発が集中している事が分かった。また、線引き都市計画区域側との比較から都市計画区域外縁に市街化が進行していることが明らかになった。