地方都市における市街化区域の拡大実態と市街化の制御に関する研究(要旨)
都市計画研究室 邱 紀春
指導教官 中出 文平
80年代から90年代にかけての世界経済の発展に伴い、自国の中国では外資企業を積極的に導入する政策に基づき、産業構造や経済構造が急激に変化したことに伴い、高度経済成長を達成したことによって、都市部では、急激な人口集中のために市街地が急速に拡大するとともに、市街地のスプロールや農地の虫食い問題が益々深刻になっている。
本研究では、この問題を解決する手法に関して、秩序ある土地利用空間を形成させるために1968年に日本の都市計画法で創設された区域区分制度について、運用実態を考察するとともに、今後の持続可能な都市開発に応じて、合理的な土地利用空間を形成させるための市街化コントロール手法を示唆することを目的としている。特に、区域区分制度に関する通達に基づいた市街化区域指定に関して、1970年からの地方都市での市街地の制御状況を考察し、また、その制度に存在する問題点を明確する。
まず、日本の地方都市の中から定義した94線引き都市を選定し、人口の成長実態、市街化区域の変遷、市街化区域内人口密度の変化などを用いて、地方都市の特性を明確にした上で類型化し、画一的な制度運用に対する地方都市の多様性を明らかにした。
次に、その94都市の中から10都市を選択し、市街化の進行状況について、都市の基本状況、人口・世帯数の推移を用いて全体像を把握し、更に市域内の人口流動状況、DID人口・空間変化、また、市街化区域の空間的な拡大状況を考察して、地方都市の市街化区域の拡大特性を明らかにした。
さらに、特徴のある3都市に対して、市街化区域の設定基準の運用、人口フレームの設定、土地区画整理事業の計画と実施状況、また、区域区分制度を支える開発許可制度の実施状況という法的な状況を把握した。これらの検討に基づいて、地方都市の市街化区域の拡大に伴う都市空間構造の変化からみて、@コンパクトな都市空間を創設する都市タイプ及びA低密に拡大する散漫な市街地を形成する都市タイプに分けられ、それぞれの原因、問題点を明確にした。
これらの検討を踏まえて、区域区分制度を運用した結果、急速で無秩序な市街地の形成を抑制し、市街化区域内に計画的で秩序ある市街地の整備を進めた上述の@タイプの都市に着目して、区域区分制度を有効に運用する手法を取り上げ、自国中国の土地利用問題に対応した土地利用規制の有効性を検討した。