地方都市中心部の持家世帯に着目した市街地変容に関する研究
都市計画研究室 井川 進 

現在、地方都市の多くでは、市街地の無秩序な拡大により中心部が空洞化し、やがて衰退している。特に中心部では人口減少と高齢化が激しく、高齢化は今後さらに進行し、高齢者や高齢世帯の増加が予想される。そして、高齢世帯の多くは持地持家で暮らしており、地方では後継ぎとなるべき世代が転出し帰ってこない事が多く、居住継承される可能性も低く、土地・住宅が居住者没後に低・未利用地化する恐れがある。
そこで、本研究では中心部の市街地変容と戸建住宅居住者の実態と意識を把握し、特に高齢持家世帯に着目して、その実態と意識を把握し、低・未利用地化の抑制や高齢者の資産を街づくりに活用するための検討や提言を行う事を目的とする。
本研究では、長岡市中心部の老朽建物率などの物的指標と高齢人口率といった人的指標を調査し、中心部でも特に地区の高齢化が激しい4地区を対象地区として選定した。ここでは、対象地区ではしもたやの増加による商業機能の低下と低・未利用地化による居住機能の低下が生じており、それに伴い人口・世帯数も減少し、高齢化が進行している事を示した。
次に、戸建住宅居住者の実態と意識を把握した結果、居住者の多くはしもたやの増加や戸建専用住宅の低・未利用地化によって地区の活気が失われ、住み難くなったと感じている事が分かった。また、対象地区内には持地持家に暮らす高齢世帯が多く、その多くが居住継承されない可能性が有り、現居住者が転居、もしくは他界した場合に低・未利用地化する恐れがある事を示した。
そして、高齢持家世帯の実態と意識を詳細に把握した結果、多くの世帯で転出者が帰ってくる事はなく、居住継承が行われない事が分かった。さらに、居住継承されないにも関わらず、土地・住宅といった不動産を手放す気はなく、転出者に相続させその後はどうなっても良いと考えている居住者が多い事も分かった。
このように、現在中心部では様々な問題が生じており、その問題には高齢化の進展に伴う居住継承されない高齢持家世帯の増加が関係していると考えられる。
そこで、街の顔としての役割を果たさなくなった中心部を蘇えらせるために、居住継承されやすい環境、転出者を中心部に引き止めるための街づくりを考えるとともに、市街地の低・未利用地化を抑制するための手段として居住継承されない高齢持家世帯の不動産活用に関する幾つかの提言を行った。