松田真宜
信号現示方式最適化を考慮した信号制御モデルの構築
【研究背景】
都市交通の円滑化の一手段として,交通信号制御があり,わが国の交通信号制御技術も高度成長期以降発展をとげてきた.近年では,ITS(Intelligent Transport Systems )の発展により,交通量データの入手精度の向上やUTMS(Universal Traffic Management System)に代表されるような高度な交通信号制御が可能となってきている.しかしながら,わが国の信号制御方式の大半は,制御システムの運用上の理由から,運用者レベルでの試行錯誤的に決められることが少なくない.この中で交通管理者の頭を悩ませる問題は,時々刻々と変化する交通流に対して,信号現示の設計と信号制御パラメータの設定を行うことにある.この問題を簡単にするため,現状では信号現示と信号制御パラメータは,静的な指標である交差点飽和度と現示飽和度から,交差点ごとに設計されてきた.この立案過程は,非常に時間のかかるものであり合理的な立案方法の確立が望まれているのが現状である.
【研究目的】
本研究では,以上の背景に基づき,施策立案システムの基礎的研究として,信号現示方式の最適化を含めた合理的な信号制御パラメータの最適方策の構築を目的とする.まず,交通流シミュレータを構築し,これを母体に信号現示企画の最適設計,渋滞改善の期待値が大きいとされる信号制御パラメータの最適化を図るシステムを提案する.
【結果】
交通流シミュレータに交差点の簡易設計機能を持たせることにより有用な現示方式の枚挙と抽出が行うことを可能とした.これにより従来大幅に時間を費やした現示企画の設計が,簡単なデータ入力により行うことができるようになった.
地点制御(1交差点)を対象とした制御では,従来の飽和度指標による信号パラメータの設定と遅れ時間式による最適パラメータの設定を比較し優位な結果を得た.また,信号現示の最適化を図ったケースでは,信号制御パラメータの最適化を図るより交通量の状態によっては,大幅な遅れ時間の改善を行うことができる事がわかった.
系統制御(5交差点)を対象とした信号パラメータ(サイクル,スプリット,オフセット)制御では,オフセットの準最適化とオフセット変更時の交通流の乱れを最小限にする追従方法を図り遅れ時間が改善されることを確認した.この場合,交通量が非飽和時では効果が比較的大きく,過飽和時では効果は小さなものとなっている.また,この際現示方式の最適化も行っているが,これによる大きな弊害は無かった.