高瀬修一
個人的差異を考慮した追従挙動分析と渋滞シミュレーション
【研究背景】
近年、日本の高速道路網は着実に整備が進展してきており、主要都市間同士を結ぶ大動脈としての重要な役割を担っている。飛躍的に利便性が向上した一方で、高速道路の利用者の増加が、交通渋滞を引き起こす原因ともなっている。
渋滞が頻繁に発生する地点、いわゆるボトルネックにおいて、同じ交通量であっても渋滞が発生する場合としない場合があることが明らかになっている。これはドライバーの質の違い、つまり個人的差異が影響しているものと思われる。
現在までに実際の交通現象を再現する目的で様々な追従挙動モデルが提案されている。しかし、実際の交通現象を再現し得るまでには至っていない。また、加速や減速、車間距離の長短、相対速度の大小など追従挙動に関する様々な走行状況に応じて、モデルのパラメータが変化する事を考慮した研究もほとんどない。

【研究目的】
本研究では、追従挙動の個人的差異と走行状況別差異を明らかにすることと、既存の4つのモデルの中から走行状況別に有効なモデルを提案することを目的とする。

【分析手法】
まず、東名自動車道・中央自動車道での4つの追従実験データを用いて、反応遅れ時間の推定を行った。推定結果を基にして追従挙動全体、加速時、減速時、追従車速度が15m/s以下、15m/s以上、車間距離が20m以下、20m以上、相対速度がプラス、マイナスの9つの走行状況において既存の4つのモデル(GMモデル、線形Kometaniモデル、非線形Kometaniモデル、Helleyモデル)のパラメータ推定を行い、その結果を用いて走行状況別の再現性を検証し、有効なモデルを提案した。

【結果】
1)反応遅れ時間は個人ごとにかなり差がある。
2)GMモデルについては、パラメータのばらつきが大きく、適用範囲がかなり狭い。
3)線形Kometaniモデルについては、パラメータの安定性が高く、適用範囲が広い。
4)非線形Kometaniモデルについては、パラメータの安定性に若干の問題があるものの、適用範囲は広い。
5)Helleyモデルについては、パラメータの安定性に問題があり、線形Kometaniモデル・非線形Kometaniモデルより適用範囲が狭い。