波多野亨
信濃川小千谷地点流量資料の解析
信濃川小千谷観測所で観測されるデータは毎時の流量である時刻流量として記録される。この時刻流量データからその日の平均流量(日流量)と日最大流量を求めることができる。

 先ずは日流量データを用いて年間流出量、4水量について変動調査をしてみた。
年間流出量の経年変化を見ると期間の中頃から変動が大きくなっていることがわかる。
1975年を境に前期、後期とわけて標準偏差を比較してみても後期の標準偏差は前期の約2倍だった。

 次に4水量について解析を行なった。1年間の日流量データを大きい順に並び替え、横軸に日数、縦軸に流量値を示したのが流況曲線で、このグラフを年毎に作り、豊水量、平水量、低水量、渇水量を求め、経年変化を図に示した。すると比較的高い水量(豊水量、平水量)において期間の中頃から変動が大きくなっていた。しかし比較的低い水量においては変動は一定だった。

 
次に日最大流量データを用いて解析した。河川の計画高水流量は、観測データを確率分布と照らし合わせて、それに基ずく確率流量により決定されるようになっている。よって、計画高水流量は過去のデータにより左右される可能性がある。

 信濃川小千谷地点において観測された年最大流量データ(1927〜2000年)の変化を見ると、1981年から3年連続で、それまでの最大流量を3000m^3/sも超える大流量が観測された。このような大流量のデータを含めて解析すると、流量の統計的特性は変化する可能性が指摘されている。

 そこで統計的に安定なデータを得るために、ここでは流量のデータをその成因ごとに分類して解析することにした。既に台風と梅雨前線を含む期間のデータが確率分布への適合性が劣ように指摘されているので、先ず、この期間(6月〜11月)の月最大流量値を抽出し、ヘーズンプロットにより対数正規分布に当てはめた。その結果、9月の台風による出水の頻度の高い月のデータが対数正規分布に対して複雑な変動を示した。

 次に、気象的成因別の年最大流量値を抽出し同様に対数正規確率分布に当てはめた。
その結果、梅雨前線のデータは、確率分布にたいして台風によるそれに比べて、安定した適合を示した。一方、台風に関しては、対数正規確率分布に対して波打つような分布の適合を示した。

 100年確率流量で比較してみると、全期間の年最大流量で9366.7m^3/s,1960~2000年の期間で11024.5m^3/s、月別の最も高い9月で9545.4m^3/s、ついで成因別の台風期で11499.3m^3/sである。これらの値から、成因別に分類した100年確率流量が、最も大きい。
これにより成因別に分類した方が、より信頼度の高い解析結果が得られることがわかる。