豊田 文吾
局地気象モデルを用いた日本海沿岸域の降雪量水平分布の解析
融雪後,長期にわたって河川流出量に影響を与える積雪水量としての積雪量の監視は,夏季の渇水期を含めた水資源管理を考える上で非常に重要である.可視・マイクロ波センサを用いた衛星観測による積雪域の特定は既に為されているが,積雪深の推定は山地の雪観測点が少ないために未だ困難である.また,数値シミュレーションを用いた積雪量の正確な推定が行われた実例もなく,その問題点も明らかにされていない.そこで本研究は,局地気象モデルを用いて日本海沿岸域の積雪水量の推定を行い,数値シミュレーションを利用する際の問題点を明らかにすることを目的とする.数値実験結果の同定には,気象庁のアメダス気象観測データを用いた.解析対象領域は,新潟県・富山県・石川県を含む400×400kmとした.里雪型の実験として2001年1月26日0時(UTC)から3日間,山雪型の実験として2001年3月06日0時から4日間を対象に,格子間隔を15km〜3kmに変えて降雪量水平分布分布の解析を行った.
里雪型降雪実験では,気温・降水量におけるアメダスとの二乗平均誤差水平分布から,長岡市周辺の平野部で誤差が大きいことが分かった.また,長岡市における降水量を時系列で比較すると,降雪が観測されている時間帯にモデル内では降雪が過小評価されていた.この点に着目して,雲の生成に影響を及ぼす風の水平収束分布を調べた結果,沿岸部に現れるの収束がモデル解像度に依存しており,解像度を上げることで収束が維持され降雪が再現された.また,飛騨山脈や妙高山など強制上昇によって降雪が起こる地域では,解像度に関係なく降雪の過大評価が起こるという傾向が明らかになった.
山雪型降雪実験では,気温は良好な結果を得られたが,降雪量は日本海沿岸全域で過大評価された.解像度を上げた実験においても,降雪量の分布は現実と大きく異なる結果であった.
この結果から,気温や風などの力学過程は解像度を上げることで予報精度が向上したが,降雪などの物理過程については,里雪型・山雪型などの降雪機構や解像度に関わらず強制上昇による降雪を過大評価してしまうことが明らかになった.水蒸気スキームのパラメータ検討や,衛星観測を用いた積雪域の比較などが今後の課題である.