土佐林 卓
リモートセンシングデータを用いた高緯度流域降雪量補正に関する研究

高緯度において降水量の多くは降雪であり、その融雪水は非常に重要な水資源であるが、同時に災害を発生させ大きな被害をもたらす要因でもある。高緯度において流出の実態を把握することは、防災、融雪水の有効利用の両面において非常に重要なことなのである。
しかし、高緯度ではその地形や気候からだけでなく、降雪粒子が風に運ばれやすいこと、雨量計の存在により周囲の気流が乱され降水粒子がうまく捕捉されないことなどから正確な量として降水が計測できない。したがって積雪や降雪特性を把握することは非常に困難である。
そこで本研究では、対象領域をレナ川として、分布型融雪流出モデルを用いて、流出量、積雪面積の2つの指標が出力データと観測データで合うようにモデルパラメータを同定し、降水量補正を行った。
しかし、パラメータの同定だけでは降雪・降雪過程を完全に再現することはできなかった。特に融雪過程は非常に多くの気象因子と要因で発生する現象であり、モデルで再現することは非常に難しい。そこで、対象とする気象因子を気温のみとするdegree-day法を用いた融雪モデルと熱収支式により様々な気象因子からエネルギーバランスを解くことによって融雪熱量を算出する融雪モデルの2種類を用いて、気象因子が出力に及ぼす影響とその効果について評価を行った。degree-day法を用いたモデルでは、気温の上昇にしたがって融雪が短期間で完了してしまう。一方、熱収支式を導入した融雪モデルは、非常に観測値に近い過程で融雪が起こり、融雪が始まってから完了するまでにかかった期間はほぼ同じである。しかし、どちらの融雪モデルでも融雪が始まる時期に約1ヶ月の遅れを生じてしまう。これにはいくつかの要因が考えられるが、最も大きいと考えられるのは、入力データの時間分解能の問題である。融雪開始時期において、融雪は昼間に起こるが時間分解能が大きければ昼と夜で融雪が発生する要因が相殺され、融雪が発生していないことになり融雪開始時期が遅れてしまうのだ。したがって、今後は入力データの補間方法等を考えながら入力データの時間分解能を細かくしていく必要があると考える。

 さらにモデルによって再現される降雪・積雪過程を定量的な指標から評価するために、マイクロ波放射計であるSSM/Iで観測された輝度温度データを用いて放射率データ抽出し、モデル出力との比較を行っている。