田中 順子
「長岡市柿川流域における洪水危険性の研究」 

 長岡市は、大正時代の末期に全国でも7番目という早い時期に下水道事業に着手し、事業を推進してきた。その結果、下水道汚水普及率は平成10年度末には90.6%にまで到達している。 しかし、近年の急激な都市化にともなう市街地の拡大は、遊水機能を持つ田畑を減少させるとともに、宅地・道路等の舗装化により不透水面積を著しく増加させている。その結果、既存の管渠の能力以上の雨水の流入に対応しきれず、都市型水害が頻発するようになってきた。本研究では都市整備の進んだ現在の長岡市において、雨水管路網に対する流出モデルの作成を試みることにより洪水危険性を検討した。

 対象とした流域は、新潟県中央部に位置する長岡市を流れる柿川流域である。流路延長は約11km、流域面積約12.9km2で、人為的に作った河川ではなく、信濃川の影響を受けて自然に今の流路になった河川であり、近年は発生件数は比較的少ないが,過去に何度も水害のあった河川である。解析の準備段階として長岡市の雨量の統計的性質を知るために、統計解析を行い、また管路データをつくるためにひとつひとつの管渠データ(管路の管径、勾配、管渠と管渠の距離、管渠が抱える面積)を下水道台帳から抽出した.また、長岡市の洪水の記録、雨水の記録を解析し、洪水危険度を明らかにした。

 前述の雨水流出モデルは、下水道区域において、一つ一つの管渠データを入力し、実際の管路網を熟慮して雨水流出量を算出する管路網モデルと、下水道区域外での流出量を算出する貯留関数法を組み合わせたモデルである。今回構築した管路網モデルは、計算結果として、全体の流量のほかに、どのマンホールであふれているか、どの程度の流速であるか、等、各管路での状況も知ることができる。
今回、モデルを構築し、柿川流域に適用、市街化区域の洪水シミュレーションを行った結果、流量および管路内での情報を得ることができ、洪水氾濫の危険個所を指摘することができた。検証方法の一つである、合理式での計算と比較しても、ほとんど値が変わらないという結果が得られた。しかし、手作業に頼らざるを得ない部分がたくさんあり、その改善が課題として挙げられるであろう。