館野裕孝
入力データの時空間分解能が流出解析に与える影響の検証
流出解析において、解析の基礎となるものは気象データである。気象データは、地形
条件等によりその観測点の空間分布状況が均一ではなく、得られるデータの時間分解
能は1日や月平均等、様々である。分布型融雪流出モデルを用いて流出解析を行う際、
このような入力データの時空間分解能の違いによるモデルへの影響は明確にされてお
らず、精度の高い解析を行うためにも、時空間分解能による影響を考慮したモデルを
構築する必要がある。そこで、本研究では、入力データの時空間分解能が分布型融雪
流出モデルへ与える影響について検証を行い、どのような影響を受けるのかを把握す
る。検証にはミシシッピ川を対象流域として、グリッド型の時空間分解能データを数
パターン作成する。そして、これを分布型融雪流出モデルに入力し流出解析を行い、
影響を検証する。
検証を大きく分けると、
検証1:グリッドデータ作成時の補間方法による影響の検証
検証2:時間分解能による影響の検証
検証3:空間分解能による影響の検証
である。検証を行うために作成したグリッドデータは次のような時空間分解能で、最
近隣法・線形補間法を用いてデータ補間し、作成した。
検証1:
.空間分解能1度,時間分解能1日
.サブグリッド5分(補間)→(平均)1度,時間分解能1日
検証2:
.のデータを基に、平均雨量として作成(時間分解能1〜5,10,15,30日)
検証3:
.空間分解能5分,時間分解能1日
これら作成したグリッドデータによる解析で得られた結果は次のとおりであった。
検証1:
・データ補間方法に最近隣法を用いた場合、線形補間法に比べ、設定される雨量が大
きくなり、その結果流量が増す。
・降雨データの空間分布を考慮する場合、最近隣法よりも線形補間法を用いた方が、
降雨分布の再現性が高い。また、補間時の空間分解能が高いほど、降雨分布の再現性
は高くなる。
検証2:
・入力データの時間分解能が粗くなるほど、モデルの蒸発量計算において蒸発割合が
増し、その結果流量は低くなる。
・実測月流量を対象に再現計算を行う場合、時間分解能1日データによる解析結果より
も、時間分解能1ヶ月データを用いた解析結果の相関係数が高い。
検証3:
・空間分解能5分のデータを基に、流出量算出を空間分解能5分で行う場合、計算時間
は既存の約10倍長となる。
・空間分能1度,サブグリッド5分→平均して空間分能1度,空間分能5分の入力データ
うち、空間分解能5分による解析結果は最も実測流量との相関係数が高い。