地球環境研究室 阿部真也
「魚野川流域における融雪流出解析手法と積雪機構に関する研究」

 雪は雪崩や交通障害など災害の原因となる反面、貴重な水資源を提供するという二面性がある。この雪の春季の融雪期洪水を防ぎ、水資源として有効利用するには、積雪を時間的・空間的・定量的に把握することが重要である。これが可能となれば、温暖化により早まった融雪出水がおこす水害、農業の水需要期変化などへの問題解決手法になることも考えられる。しかし、積雪の多い地域は山岳の割合が多く、積雪観測は非常に困難であり、モデルによる降雪・積雪・融雪特性の再現の必要性が高まってきている。そこで、本研究では分布型融雪流出モデルにより融雪期の流域流量を高精度に解析する手法を解析する.本研究では特に、流域の積雪面積と融雪熱量について実測とモデルとの比較を行い、モデルの高度化を目指すものとする.

 対象流域は、日本でも有数の豪雪地帯として知られる新潟県南魚沼郡を流れる信濃川支川魚野川流域の六日町上流域である。解析期間は降雪・融雪現象の発生する期間であり、2000年11月から2001年6月までとした。

 分布型融雪流出モデルは、流域をメッシュ標高データで表現し、実河道の特性を考慮して形成される擬河道網からなる分布型流出モデルと、熱収支項を各メッシュ点で計算して融雪量を算出する融雪モデルを組み合わせたモデルである。モデル中、各メッシュでの降雪は、降水があり、気温2℃以下であれば降雪とし、一般に雨量計の測定降水量が降雪時には真の降水量よりも少ないことを降水量補正係数で、降雪量は標高とともに増加することを降雪量標高補正係数で、降雪量としての降水量の補正を行っている。この降水量補正係数と降雪量標高補正係数は流域出口での計算流量と実測流量の誤差を最小とするように求めるのを基本としている。

 また、流出解析の精度を高めるために計算途中に出力できる融雪期の積雪面積と衛星画像から得られる積雪面積の比較を行い、融雪期に行った乱流観測のデータから乱流熱輸送を求め、融雪モデル内の融雪熱量と比較する。以上の比較により、融雪流出モデルの信頼性を確かめた.さらに、積雪相当水量と計算値の比較を行った。

 融雪熱量の比較を行い、モデルと積雪深計のデータから、比較的似た傾向を見ることができた。結果から降雪量補正モデル、融雪モデルを改良することにモデルの精度向上の可能性があることが示唆された。