固形性有機廃棄物の嫌気性消化加水分解段階に関与する微生物群の多様性解析
豊嶋拓
固形性有機廃棄物が現代社会においてほとんどが焼却・埋立によって処分されている。その中で、嫌気性消化法はこのような廃棄物中の有機物をメタンエネルギーとして回収できることから注目されている。しかし、固形性の有機廃棄物の嫌気性消化には加水分解段階がプロセス全体の中でも律速であるとされながら今までに画期的な打開策がないのが現状である。本研究では、今までに微生物の多様性についてあまり報告されていない実処理場発生汚泥(生ゴミ・消化汚泥)を用いて嫌気性消化の加水分解に関与する微生物について分子生物学的手法を用いた微生物多様性解析を行った。本実験では汚泥中から微生物由来のDNAを抽出するためビーズビーダ法を用いた。また精製にはフェノールを用いた。PCR反応には阻害が見られたためキットによる精製を試みたところ、増幅が見られるようになった。その結果、生ごみサンプルについては乳酸菌群であるLactobacillusb caseiがドミナントであると推定され、その他にも乳酸菌群の存在が考えられ22クローン得たうちの16クローンを占めていた。また、ついでCoprothermobacter priteolyticusが多く存在していることが推定された。消化汚泥では細菌のドミナントがCoprothermobacter priteolyticus、古細菌がMethanobacterium thermoautorophicumであると推定された。Lactobacillusb は炭水化物分解性であり、Coprothermobacterのようなタンパク質分解菌が一種しか生ゴミから検出されずさらには消化汚泥でドミナントであったことからこの処理プロセスにおいてはタンパク質分解が最後まで長引いていることが考えられる。一般に炭水化物はタンパク質より分解速度が速いとされるため、汚泥中において時間的に見てどのあたりでCoprothermobacterがドミナントになるのかを把握することが、このプロセスのカギになるのではないかと考えられる。