山口健志
時系列LANDSAT‐TMデータを用いた長岡市における
土地被覆変遷の空間的特徴の抽出手法
現在、土地被覆分布の様子や変遷状況を広域的かつ定量的に評価する情報は限られており、直接広域的な開発域を表す情報はほとんどない。土地利用や土地被覆を解析する場合、衛星画像などのリモートセンシングにより得られた情報を用いる事は非常に有用である。また、土地被覆変遷領域を表す資料や情報が少ないことからも、それらのデータを用い変遷領域を抽出するアルゴリズムの開発が求められている。
本研究では過去15年間にLANDSAT衛星により観測された85年、89年、93年、99年の4時期における長岡市周辺のデータから土地被覆状況の解析を行い、その解析結果をそれぞれ時系列的に比較することで土地被覆分布の変遷領域を調査・抽出した。各時期の解析結果から、4地域について長岡市都市整備部データとの照合を行った。3地域については誤差が6%程度であったが1つの地域については対象期間の相違から大きな誤差が見られた。
衛星データによる変化領域の抽出結果は1画素単位で表現されるため、形状や位置情報といった空間的な特徴の認識が困難であり、変遷領域を定量的に評価することも難しい。そこで、画素ごとに表現された変遷領域の空間的な特徴を認識しやすくするための方法として統合化処理を開発した。
統合化とは、変化点同士が近傍に存在し合えばそれらを統合し、反対に孤立した変化点であれば取り除く効果を持たせることで、処理内容は膨張フィルタ、縮小フィルタと呼ばれる2つのフィルタを組み合わせたものである。まず、膨張フィルタを通すことで点々と存在していた変化点を膨張させ統合化する。そして、膨張した変化点に縮小フィルタを通すことで比較的元の状態に近づけることができる。
統合化処理の結果、変化抽出データは点同士で1つのエリアを構成しているため、変化領域の空間的な情報・特徴を直感的に認識することが可能となった。また、条件を変化させることで全く違った空間的な特徴を得ることができ、従来では行えなかった空間規模別に変化領域を抽出できるようになった。統合化されたことより、土地被覆変遷領域の定量的な把握が可能になった。これらの基礎資料の都市計画等への活用が期待される。