坂田 健太
「TRMM TMIとVIRSデータの雲域を考慮した海面温度観測特性の解析」

地球規模での海面温度(SST)を把握し、異常気象や気候変動などを解析ためには測器を地球全体に展開し観測することが理想である。そこで、衛星リモートセンシングを用いたSST観測は有効な手法である。またより身近なSSTデータの利用分野としては漁業分野である。潮目等に魚群が分布するという特徴を利用し、良好な漁場を選択する目安としてSSTデータが利用されている。
衛星によるSST観測には、マイクロ波域の観測と可視赤外域の観測と2種類方法がある。マイクロ波域のSST観測の特徴として、低空間分解能ではあるが雲域や昼夜に関係なくSSTを得ることができる。可視赤外域のSST観測の特徴としては、高空間分解能であるが、雲域が海面を覆っているとSSTを得ることができない。
本研究では、マイクロ波放射計TMIと可視赤外放射計VIRSを同時搭載しているTRMMに着目し、両センサの長所を活かした雲域欠測がない高空間分解能SSTデータの作成を目的として
a) VIRS SSTデータの雲域除去
b) 雲域部分へのTMI SSTデータの内挿
について検討を行い、また両SSTデータを比較しその特徴を解析した。
なお使用したデータは2000年6月22日と23日である。
定量的な雲域除去としてVIRS BAND1(可視)と水の反射が小さいBAND2(短波長赤外)のデータを使って主成分分析により、雲域を有効に識別する方法を開発した。VIRS SSTにTMI SSTを内挿するコンポジットSST画像作成において、VIRS SSTデータを極力残しながら(つまり雲域部分の除去を最小限にしながら) 雲域を取り除く必要があるため、可変閾値による方法を新たに考案した。可変閾値を変化させる要素としてVIRS SSTとTMI SSTのばらつき(標準偏差)より行った。風速についての解析から風速が3m/s以下ではVIRSの方が若干高くなる傾向が見られた。VIRSの方が海表面に近い面を観測しているためではないかと推定される。
本研究で開発したアルゴリズムによる高空間分解能SSTデータは潮目が明確に細かく捉えることができるようになりより、これまでよりも明瞭に潮目を把握することができ、漁場探索が可能になる。今後はSST内挿における終了条件を標準偏差が2.0k以下の累積が全体の80%以上としたが、この値について検討する余地がある。