遮水鋼板を用いた新規最終処分場における鋼板の腐食因子に関する研究

廃棄物・有害物管理工学研究室  吉村有希子
指導教官   小松俊哉、桃井清至、姫野修司

 
現在、安全性の確保された最終処分場が求められる中で、従来遮水材に用いられてきたゴムシートに代わり、鋼板を用いた新しい管理型最終処分場(鋼板遮水システム)の開発が行われている。しかし、鋼板を遮水工に用いた場合、ごみ、浸出水、地下水等による遮水鋼板の内外面の腐食が懸念されることから、塗装および腐食代により防食を行う必要がある。腐食代とは、埋立廃棄物が安定化し、処分場が廃止されるまでの鋼板の腐食量を想定して、予めその分の板厚を増しておくという方法である。しかし、廃棄物中における鋼板の腐食量についてはこれまで知見がない。
そのため、本研究では、廃棄物中における塗膜の性能確認と鋼板の腐食量を野外曝露実験により調査するとともにその腐食因子を考察した。さらに、腐食因子が鋼板腐食に与える影響を調べる室内実験より、実際に使用する鋼板の種類および必要板厚について検討した。
1) 野外曝露実験
産業廃棄物最終処分場内と、同一の焼却灰の埋立を行った最終処分場と鋼板遮水システムの実証プラントの計3ヶ所に未塗装片及び各種塗装片を埋設し、最長2年間の野外暴露実験を行った。アド−ヒージョンテスト等の塗膜の性能調査では、いずれの塗装片も、試験期間を通して健全であった。しかし、傷の発生地点からの腐食が確認された。
一方、未塗装片の腐食量測定を行った結果、産業廃棄物中に埋設した鋼板の年間腐食量は最大で0.06 mm/year、焼却灰中に埋設した鋼板の年間腐食量は最大で0.15 mm/yearであった。産業廃棄物最終処分場内の異なる地点に埋設した鋼板腐食量は、pHが低いほど増加した。しかし、焼却灰中に埋設した試験片の腐食量測定結果から、pH以外にも塩化物イオン濃度、溶存酸素濃度が影響していると考えられた。
2) 腐食因子が鋼板に与える影響
野外暴露実験における鋼板の腐食因子と考えられた、pH、塩化物イオン、溶存酸素および焼却灰について条件を設定し、4ヶ月間の浸漬腐食試験を行った。試験の結果、溶存酸素濃度が0〜2 mg/lよりも溶存酸素濃度が4〜5 mg/lの試験水中における鋼板腐食量が多かったことから、溶存酸素が腐食に最も影響を与えることが明らかになった。なお、溶存酸素濃度が4〜5 mg/lの試験水中における鋼板の年間腐食量は最大で0.14 mm/yearであった。
以上の結果から、鋼板の設計をより安全側に行うために、焼却灰中における未塗装片の年間腐食量から、必要板厚を決定することができた。