一般廃棄物の組成変動がガス化溶融処理における熱分解生成物に及ぼす影響

廃棄物・有害物管理工学研究室 三浦 崇 
指導教官 小松 俊哉

                                         桃井 清至                                         姫野 修司


 我が国の一般廃棄物の大部分は焼却によって処理されてきたが、最終処分場の逼迫や焼却処理によって生成するダイオキシン類等の問題から、資源循環型社会に適する次世代型廃棄物処理方法として開発されたのがガス化溶融炉である。ガス化溶融炉は、廃棄物の潜在的なエネルギーを用い、外部から投入されるエネルギーを極力抑え、灰分を溶融しスラグ化させるシステムである。近年、ガス化溶融炉は、さかんに実証試験が行われ、実用段階に入り、さらに、厚生省によって、ごみ処理の広域化指針が各自治体に通達されたことによって、急速に普及しつつある。

 しかし、排出される一般廃棄物は、多組成かつ変動があり、ガス化溶融炉の処理を難しくしている。しかし、これまでごみ質の多組成および変動が、ガス化溶融炉に与える影響について報告されたことはほとんどない。

 そこで、本研究では、一般廃棄物の組成の違いがガス化溶融処理の熱分解生成物に与える影響を把握するとともに、熱分解温度が熱分解生成物に与える影響を把握することとした。さらに、ガス化溶融処理を行うにあたっての熱分解工程とその後の燃料・溶融工程を通して最適な熱分解条件を検討した。

 一般廃棄物の組成の違いを検討するため、日本国内のRDF製造施設の約半数にあたる17ヵ所からRDFを提供して頂くとともに、アンケート調査を行いRDFの物理組成データを得た。得られたRDFを同一熱分解条件(500℃、60min)によって熱分解した結果、ごみ質中のプラスチック類の含有割合が高い場合、熱分解残渣の生成割合が低下し、タール生成割合が増加した。また、熱分解残渣の工業分析結果から、熱分解によって揮発分が減少し、燃料比(=固定炭素/揮発分)が増加したが、燃料比は、様々なごみ質であったにも係わらず、およそ2〜3の範囲でありほぼ一定であったことから、投入されるごみ質が変動しても、熱分解工程によって均質な残渣となり、その後の工程を安定に行えることが分かった。

 次に、熱分解温度が熱分解生成物に与える影響を把握するため、得られたRDFの中から一般廃棄物の組成に近似している2種類のRDFとプラスチック類の含有割合が高いRDFを用いて、熱分解条件を変えて実験を行った。その結果、熱分解温度が高くなるほど、熱分解残渣の生成割合が低くなった。熱分解ガス成分については、熱分解温度が高くなるほど、可燃性ガスが発生し、熱分解ガスの低位発熱量が高くなった。熱分解残渣を分析した結果、熱分解温度が高くなるほど燃料比が増加し、燃焼開始温度も上昇したことから、燃焼性が低下したことが分かった。このことから、熱分解条件と発熱量および熱分解残渣の燃焼性は、トレードオフの関係になることが分かった。

 これらの結果から、熱分解工程と燃焼・溶融工程を通して最適熱分解温度を検討した結果、熱分解温度は500℃が最適であることを明らかにした。